Interview
洋食ビストロむろ屋様
インタビュー
今回は、福岡市博多区の呉服町にある ” 洋食ビストロむろ屋” オーナーシェフの室屋 真之さんにお話を聞いてきました!
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室屋 真之さん
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Taberiiインタビュアー
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本日はよろしくお願いいたします。
まず、お店のお名前の由来をお聞かせください。
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元々、自分の名前は使おうと思っていました。
前のお店は「博多洋食むろ屋」って付けていたんですけど、移転したので、「何か変化を付けないと」となってシェフむろ屋、むろ屋亭とかを考えた中で、「洋食ビストロ」と名付けました。
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なるほどですね。前は洋食のみで、現在はビストロ。
違いみたいなのがあるんですか?
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前のお店は博多座も近かったですし、博多感が強いというか「博多洋食」というのはあまり聞き馴染みがないですけど、 聞いたら忘れないだろうなと考えて付けました。それが馴染んできたというか、 移転を機に「洋食ビストロ」を入れて、洋食のカジュアル感を更に追加しました。
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分かりやすいですね!
お店を開業したのはいつごろですか?
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博多座近くで開業したのが2013年で、今の呉服町に来たのが2018年の冬ぐらいからです。
2018年12月20日にオープンしたので、それからですね。
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この場所を選んだ理由はあるんですか?
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なるべく前のお店の周りで、今まで来てくれていたお客様の近くにいたいなと思いつつも、物件がなかなか無かったのと、少し高いなというのもあって、若干離れることになりましたが、特別感というか、こっちはゆっくりもできるし、穴場的な雰囲気で選びました。
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こちらの場所に移転されてみてどうですか?
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前は賑やかだった一方でこっちは落ち着いた感じの雰囲気になりますね。前の店は縦に長いレイアウトだったので、お客様の後ろを行ったり来たりするという感じでした。ですが、こっちはゆったりとした空間もありますので、お客様としては居心地が良いのかなと思っています。
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利用者にとっては居心地がとても良さそうですね。ずっと福岡で営業をされていらっしゃいますけど、室屋さんの出身はどちらなんですか?
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出身は飯塚なんです。
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そうなんですね。お店をされることになって、博多をお選びになったきっかけや理由などはあるんですか?
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そうですね。かなり場所は探しました。東京の東銀座の歌舞伎座のちょうど真裏に「パリのワイン食堂」という、まるで本場のパリにあるようなビストロがあるんですけど、そこをすごく気に入っていて、前のお店が博多座も近かったので、そういったイメージを持って、場所を選びました。
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なるほど。それで博多座の近くだったんですね。
なにか料理の道に進むきっかけなどお聞きしてみたいのですが、元々小さい頃からお料理がお好きだったんですか?
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僕が小学生だった当時は4年生くらいから、男子も家庭科があって、野菜炒めやフレンチドレッシングなどそういうものを作った時には、家で何回も作って食べてもらってみたいな、学校で作った料理を家でも作ることが楽しいというのがありました。
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すごいですね!小さい頃からお料理を学校でも家でも楽しまれていたんですね。
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そうですね。小さい頃は包丁や火に関して、使うことについては注意をされましたけど、使ったらいけないとは言われなかったので、自分ですることが普通でした。「危ない、火の元」言われると、もう何もせんほうがいいとなりますけど、そういうことは無かったので、そういった面では容認されていたのかなという感じですね。
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周りの環境が作っていいよという感じだったんですね。
どなたかに作ってあげたりされていたんですか?
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両親、家族というか、兄貴二人いて僕が一番下で、ご飯の用意とかそういった感じになっていたので、そういうのもあったのかもしれませんね。
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そうだったんですね。
様々な料理のジャンルがある中で、何故フランス料理だったんですか?
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中学生の時もお菓子作りにハマっていて、高校では近くのレストランで働くようになったんですね。それで、高校卒業後は専門学校に行っていろんな料理に出会ったんですけど、専門学校は本当に基礎からなので、僕にとってはこんなことするんだって感じだったんですよ。もっと別のことを知りたいなと思ううちに、進路を決める時期になって、選択肢が和と洋どっちに行くかだったんです。
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中華とかはなかったんですか?
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当時あったかもしれないですけど、そこまで中華ってメインじゃなかったんですよ。
なので、和と洋どっちがいいかなと考えてました。
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専門学校を卒業されてからはホテルへ就職されたんですか?
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はい。専門学校卒業後にホテルに就職しました。それで、ホテルを辞めるタイミングで、フランス料理屋さんで働くようになって、
そしたらフランスにちょっと行きたいなと思い始めたんですね。それで、フランスに3年弱行って、
帰ってきてからフランス料理屋に就職して、20年くらいやってました。その後、料理長をして、独立となりました。
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フランス料理の面白さに気づかれたのは、ホテルに就職されてからですか?
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そうですね。いろいろ知りたいなというのもあって。フランス料理は組み合わせが無限にあるので、面白いなと感じました。僕の中で料理の組み合わせには限りがあると感じていたんですが、フランス料理では使うソースにしてもいろんなものが入ってくるので、ドレッシングにしても結局ビネガーもいろんな種類があるし、組み合わせがものすごくあるんですよね。ソースにしても素材から取るソース、野菜から取るソース、お肉から取るソース、それに合わせるものの素材が何なのかとかによっても変わってくるし、これをいかに軽く仕上げるにはどうしたらいいのかとか、突き詰めていくものはものすごく多くて、それが楽しいって感じですね。
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奥が深いですね。
組み合わせが無限というのはそういうことなんですね。
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はい。食べる人によっても感覚が変わってくるので。好き嫌いを聞いて、いかに美味しいと思ってもらえるか考えていつもメニューを作っています。
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そういう風にメニューを考えられているってことなんですけど、お店のコンセプトなどはありますか?
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コンセプトは「フランス料理をより分かりやすく」です。切り口として洋食というのは、フランス料理を食べる機会が少ない方は洋食とフランス料理って違いがあんまり分からないと思うんですよね。だから洋食で美味しいねっていうのから入ってもらって、フランス料理も一応メニューにあるので、コースも食べていただきたいなっていうのがありますね。
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まずは気軽に洋食から、それこそオムライスから食べてもらってということですね。
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そうですね。その中にはフレンチでよく使われている牛ほほ肉が入っているとか、フレンチの技法を入れてみたりとかしてですね。
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私たちも実際にいただいて、フレンチの技法が入っているというのがすごく分かりました。
気軽に自分で作れるものでもないですし、むろ屋さんでしか食べられないなと思いました。
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トリュフとかも入れたりして、なかなか出会うきっかけがないからですね。
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意識されているこだわりはありますか?
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素材に関してはこだわっていますし、お野菜にしても、肉にしても、お魚にしても、地元産のものを多く使っています。
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その仕入れ先はどうやって決めていらっしゃるんですか?
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業者さんからメインで仕入れています。ただ、農家さんにも行ってるので、そこからお野菜とかを仕入れて、お肉もそうなんですけど。
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福岡のお野菜も仕入れられているんですか?
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そうですね。ほとんど糸島産のものが多いんじゃないかと思います。週1回は農家さんのところに寄るようにしていて、農家さんからこういう野菜が採れますという形で送られてくるので、そこからお願いしています。今年の夏みたいに暑すぎると収穫がないというのもあって、状況で変わってきます。どうしても収穫が少ないと値上がりとかありますし、トマトが焼けてB級になるみたいな、色が悪いけど高いみたいな、そういう問題もあります。それを使って、メニューを考えたり、作ったりしています。
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なるほど。
メニューを考えられるときは、食材が先なんですか?
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食材が先ですね。食材があって、季節感とか。あと、その四季を大事にしますので。そういったものもありますね。オムライスとかになると、年中食べられるというイメージがあって、あまり季節感が出ないじゃないですか。フランス料理という一つのコースの流れと全然違った切り口になるので、全く違うと思うんですよね。
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そういったコースや料理などは季節感が重要ですか?
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そうですね。食材には「走り」、「旬」、「名残」というものがあって、3回楽しめるので、その違いをメニューに取り入れています。
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へー、そうなんですね。
コースでは特にその旬の食材が楽しめる感じなんですか?
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そうですね。その時取れるお野菜とかお肉は、季節によって違ってくるので、そういったものをフレンチの技法で、という感じで出しています。どちらかというと、分かりやすい、はっきりしているような作り方にしています。新しいフレンチというのはテクニックというか、お皿に少し食材が乗っているというイメージなんですけど、食材を食べて欲しいので、どちらかというと、昔ながらに近いかもしれませんね。自分のフレンチのイメージが美味しそうにソースにパンをたくさんつけて食べている感じなので、お客様にも最後まで楽しんでいただきたいですね。
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フレンチではあるけれども、しっかりボリュームも楽しめるような感じなんですか?
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ボリュームは結構あると思います。
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人気のメニューはどちらになるんですかね?
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人気のメニューだと洋食的なものかもしれませんけど、コースになると毎回同じものが出ないので、これっていうのはあまりないかなと思います。単品のメニューの中にムニエルや貝料理であったり、お肉料理があるので、そこから選んでいただいてという形になります。単品で選ぶのとコース料理というのは構成が違ってくるので、その辺は違ってくるのかなと思います。ただ、ムニエルや鴨料理はよくメディアに取り上げていただいている感じですね。
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コースでは定番のものをずっと出し続けるというよりは、その季節や旬で美味しいものをという感じですか?
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そういうのは結構あるかなって感じですね。
定番と言われると、やはり鴨料理とか、お魚料理系とかですね。
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料理で味付けや盛り付け方とかで工夫されていることはありますか?
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盛り付けの工夫だと、きれいに見えるようにというのは、もちろんあります。
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料理長までされた方ですからね。
料理長とかをされていると指示する方が多くなるイメージがあるんですが、実際はどうでしたか?
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オーナーだとそういう感じですけど、指示もするし、一緒に仕込みをするって感じですね。料理長っていうのは、こういう食材でいこうと思うって話を上から聞いて、それから発注、試作して、一回食べてもらって、これで行こうとか、こうしようと形にしていきます。それでOKが出れば、今度は下のスタッフに作ることについて、教えていったりとか、確認したりとか、味のチェックとかもあります。
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こちらではご自身で全てされるんですよね。大変そうですね。
次にお客様についてお聞きしたいのですが、むろ屋さんとしてはどのような方に来ていただきたいというのはありますか?
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特別感っていうのはないんでしょうけど、日頃使いでいいので、食べてみて美味しかったらまた誰かを連れてきたいなという感覚になってもらったらいいなという感じですね。
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最初におっしゃっていたように、洋食から入って気軽にフランス料理をという感じでしたよね。印象的なお客さんの反応とかってありましたか?
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いろんなお客さんがいらっしゃるので、難しいですね(笑)フランスの方が来られたときもあったし、歌手で有名な方も来ていただきました。高いものが必ずしも美味しいと限らないというか、それぞれ好きなジャンルがあるので、選ばれるものも変わってくると思います。僕自身、小さい頃の環境が味覚に大きく影響を与えると感じています。小さい頃に食べたものってすごく印象に焼き付いて、時間が経つにつれて、ふと「あの料理美味しかったな」と思い出すことがあると思います。味覚が小学6年生までに出来上がると言われているので、小さい頃に自然なものを食べているかって、料理人にとっても大きく作用すると思うんですよね。人の味覚ってそれまで味わってこなかったものを食べると、「これまで食べたものが一番美味しいと思っていたけど、そうでもないな」と気がつく時があるんですよ。大人になるにつれて、探究心が出てくると思うんですけど、その中でも昔の忘れられないなと思う味が皆さんどこかにあると思います。
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大人になって初めて食べるものも多いですからね。
味覚が出来上がるのが小学6年生というのは初めて知りました。
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6年生までに五味みたいな甘い、酸っぱい、しょっぱい、うま味みたいなものを感じられる、自然のいろんなものを食べさせてこれが体に良いんだよとか食育みたいな感じですると良いと思うんですよね。昔おじいちゃん、おばあちゃんに作ってもらったもの、いわゆる素朴なものが意外と記憶に残っていて、それが自然と一番美味しいとなる人が多い印象です。
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みんなに話してほしいような内容ですね。メニューについても詳しくお話しお聞きしたいのですが、限定のオススメメニューなどはありますか?
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ランチ10皿限定のビーフシチューでこれにパンやスープがついてますね。
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さっきおっしゃっていたムニエルなどは?
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単品のものになりまして、こういった地魚のムニエル、鴨のローストとか、お肉の煮込みとかですね。
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このムニエルは旬によって魚が変わるんですか?
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そうですね、変わりますね。鯛もありますけど、今はブリで、地元産で推したいというのがありますね。実際には、底引きなのでいろんな魚が獲れるんですけど。
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ブリって洋食で使えるんですか?ぶり大根や照り焼きしか作ったことが無いです。
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洋食でも使えますね。ただ和のイメージが強いでしょ?ここでは、ポトフみたいな感じにして出したりしています。
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いいですね。美味しそうですね。デザートもここで作られて出されているんですか?
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フランスはアミューズという突き出しのようなものからデザートまでがコースになるので、最後のデザートが楽しみなんです。特にフランスだと、ほとんど食事には砂糖を使わないんですよ。塩コショウしかほぼ使わないので、デザートで甘いものを食べるのを楽しみにしているんです。日本は砂糖や醤油で甘辛く煮るっていう文化があるので、とても普通に砂糖を摂っているんですよ。だから良い言い方で、「あんまり甘くなくて美味しかった」という言い方しますけど、フランス人にとってはデザートしか砂糖が摂れないので、甘いデザートが本当のデザートという感じです。
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確かに「あんまり甘くなくてちょうど良いんじゃない」と言う方もいらっしゃいますよね(笑)
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そういうのがやっぱり全然違うんですよね。フランスで豆を甘く炊くと食べてくれないですもんね。塩コショウでしか炊けないので、日本は少し甘く炊くじゃないですか。こんなの見たことないっていう感じなので、感覚的なものは全く違うと思います。
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ワインのメニューを拝見したのですが、スパークリングワインのノンアルコールも取り揃えていらっしゃるんですね。お飲み物としてはワインが良く出るのでしょうか?
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赤ワインが良く出ますね。在庫をそんなに持っているわけではないので、銘柄は入れ替わることがありますけど。
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そうなんですね。むろ屋さんとしては、お昼は洋食を中心に食べて、夜はコースで楽しんでもらいたいというイメージですか?
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そうですね。でも、コースじゃなくて少しでいいんでという方にとっては、単品的なものが喜ばれてる感じはあります。
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そうですよね、単品も充実されてるから、好きなメニューをアラカルトで選んでワインと、でもいいですね。
むろ屋さんはお一人でされているのに、メニューが豊富ですね。大変でしょう?
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メニューを減らそう、減らそうと思っているのに、どんどん増えていくっていうのが現状で(笑)仕込みとか大変ですね。
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今後のむろ屋さんの展望みたいなものがあれば教えていただきたいです。
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今後だと、もっとフランス料理を日頃使いしていただきたいというのはありますね。実際は、洋食を無くしてもいいと思うぐらいなんですけど、ただ洋食はあくまでも知ってもらうためなので。洋食よりもフランス料理が出る比率が少し上がればいいなって感じですね。どうしても洋食の方が出るので、そういった意味で洋食は出していますね。
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お店的にはフランス料理を推していきたいなっていう感じですね。
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そうですね。フランスに行くとビストロって星の数ほどあるんですけど、街場っていう意味合いも含めて、気軽に来れて、旬のもの食べようかとかいう感じでフランス料理を食べていただきたいですね。簡単にお野菜をグリルにして焼くだけでも、ホイールに包むとか、オーブンで低温で焼くとか、いろいろやり方があるので、素材でも調理の仕方が全く変わります。普段サラダでしか野菜のみの料理を食べないと思うんですが、季節のものを食べてもらいたいという思いもあるので、野菜だけの料理についても知っていただきたいなって思います。
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子供にも食べさせたいですね。子供が3人いるんですけど。いろんな食べ方があるんだよって教えてあげて、自分じゃなかなかうまくできなかったりするので。
お母さんが出すと食べなかったりするものでも、場所が変わったりすると食べたりしますよね。
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そうですね、シチュエーションとか少し風景が変わると食べたりしますね。あと、お話を聞いて食べるのとでは全く違ってくるってのもあるんですよね。
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そうですよね。最後にですね、Taberiiについてお伺いしたいんですけど、最初にこのサービスを知ったときに率直にどんなふうに思われましたか?
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僕はいろんな会社に対してこの店を知ってほしいと思っていたので、ちょうどインスタグラムでTaberiiを見て、どんなことができるのか聞いてみたいと思って、問い合わせたというのがスタートでした。
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実際に私たちが来て、話を聞いたときどう思いました?
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イメージ通りでしたし、企業さんにそういった、食に対してもそういう分野として取り入れてもらいたいなっていうのがありました。
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福利厚生の取り組みとして食事を取り入れて欲しいと。
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そうですね、職場のコミュニケーションの場として、「これを食べに行きたい」と選んでいただいて、楽しみながら食事していただきたいです。
皆さん大抵ふるさとの風景があって、作り方とか調理法が違ってくるというのといろんな出身の方が増えてきていると僕自身感じているので、ここではそういった違いを食を通してのコミュニケーションで知っていただきたいですね。
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分かりました。
今後もまた食べに伺わせていただきますので、よろしくお願いします。
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よろしくお願いします。ありがとうございます。