Interview
やさいこころ様
インタビュー
今回は、早良区の高取商店街にある“やさいこころ” 店主の杉屋 宗徳さんにお話を聞いてきました!
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杉屋 宗徳(すぎや むねのり)さん
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Taberiiインタビュアー
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本日はよろしくお願いします!
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よろしくお願いします!
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まず、お店の名前の由来を教えていただけますか?
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もともと僕は農家で、八百屋として自分で作った野菜を自分で売っていたので、店名も「のうかdeやおや」だったんです。
ずっと生産者としてやってきたんですけど、お店のスタイルを変えることになったときに、お客さんとの会話の中で「野菜に心がこもっているね」という話になって、それが印象に残ったのがありますね。
それと、うちに“こころ”に近い響きの名前の娘がいて、 それも店名の由来のひとつです。
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覚えやすくて、優しさが伝わる素敵な名前ですね。
では、高取商店街でお店を開かれたきっかけについて教えていただけますか?
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妻の知り合いの美容師さんに、ずっと髪を切ってもらっていたんですよ。
そのときに、経営の話とか仕事の話を長年聞いてもらっていて、自分で野菜を作って、良いものを育てていても、売る場所が無くて困っている、なんとかならんかねっていう話をしていたら、この場所のオーナーの息子さんと知り合いだったので、「そういえば空いていたよね、貸したりしないの?」って聞いてくれて。
実際は久留米で移動販売しかないかなって思っていたんですけど、この場所を見に来たら人通りも多くて良い場所だし、良くしてもらったから迷う必要ないかなと思って決めましたね。
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開業当初は、ご自身で育てた野菜で営業されていたんですね。
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はい。最初のうちは、自分の畑で採れた野菜だけでやっていました。朝早くに収穫して、袋詰めして、車に積んで、お店に持っていく。
全部自分の手でやっていたので、本当に「農家の八百屋」っていう感じでしたね。
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今は農家さんからの仕入れやお弁当やお惣菜も展開されていますが、お店のスタイルを変更されたのは、どういった背景があったのでしょうか?
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最初の3か月は順調だったんですよ。たくさんのお客さんに買っていただいてリピーターさんもいました。
でも開業したその夏に、トウモロコシが一気にダメになってしまったんですよ。4月の頭からずっと育ててきて、あと2週間で収穫というタイミングで、長雨が続いたんです。結果、全体の9割がダメになりました。異常気象というか、本当に尋常じゃない被害でしたね。
しかも、オクラときゅうり以外の夏野菜も全部ダメになってしまって。お店を開けても出せるものが3つしかないような状態だったんです。
お客さんが来てくれても、それじゃあ申し訳ないし、経営的にも限界を感じましたね。そこからですね、「自分の野菜だけじゃ無理だ」って、ようやく受け入れられたのは。 うちの野菜は良いものだけど、それじゃあ世の中の胃袋は満たせないんですよね。
「この店でも売ってほしい」とか「うちにも作ってほしい」って、ありがたい声もあったけど、僕一人の農業だけじゃ到底応えられない。 だからこそ、もっと広げる仕事や仕組みを考えていかなきゃいけないなと思うようになりましたね。 それまで僕は、「うちの野菜だけで儲かればいい」って思っていたんです。でもやっぱり、違うんですよね。 「大きく広げていくことが、結果的に世の中に還元できる」ってことに気づいたんです。自分ひとりが儲かっても、それだけじゃ意味がないなと。 「農家じゃなくてもいい」「八百屋じゃなくてもいい」って言えるようになりました。 そうして出てきたのが、“お弁当”っていう選択肢でしたね。
最初はお弁当じゃなくて、キャロットラペみたいな、にんじんを削って味付けした簡単なサラダから始まったんですよ。それを買っていただけるお客さんを見て、「これだけでも喜んでもらえるんだ」って感じたんです。
そこから少しずつ学び直して、お惣菜やお弁当についても理解を深めていきました。やっぱり、やりたいことって、Taberiiの理念にもすごく近いんですよ。
福利厚生で、健康的なお弁当を安く食べられるっていう仕組み。そういう未来が実現できたら、すごくありがたいし、意味があるなって感じています。
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では、自分の利益だけではなくて、社会全体を見ていきたいという思いがある中で、生産者さんとの関係もすごく大事にされていると思うんですが、どのような方とお付き合いされているんですか?
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人としてちゃんと付き合えるかどうか、その人がどんなふうに野菜を育てているかっていうのが大事ですね。
僕自身は、「この野菜はこの価格」って決めていて、仕入れが上がっても下がっても、販売価格は変えないようにしているんです。
「無農薬だから高い」とかじゃなくて、「おいしくて栄養価の高いものは、みんなに安定して届けたい」っていう気持ちがあるんです。
最近は野菜の価格が下がって、売上も落ちたりするけど、それでもカット野菜にしてサラダにしたり、お弁当に使ったりすれば、全然ロスは出ないです。 それをやっていくと、自然と仲良くなれる農家さんが増えてきて、最近だと飯塚のいちご農家さんとすごく仲良くなったんですよ。肥料会社からも「一緒にやりませんか?」って声がかかってきたんです。「あなたが言うと肥料が売れる」って言われて(笑)。
僕も実際に使っていたし、良いと思っているから勧めるだけなんですよ。 自分で作っていた経験があるから、使い方も、良し悪しも分かる。
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やっぱり生産者の気持ちがわかるというのがポイントなんでしょうね。
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今、売上も順調ですけど、僕自身はそれを目的に動いているんじゃなくて、「良いものは、正しく伝えたい」っていうそれだけなんです。
ただそれだけの想いでやっているから、受け入れてもらえるんだと思います。
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これまでいろんなこだわりや、大切にされていることをお聞きしてきましたが、 「やさいこころ」として、これは絶対に外せないという一番のポイントってなんですか?
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やっぱり、「元気で、一生懸命仕込むこと」ですね。
自分のメンタルが落ちていたり、愚痴っぽくなっていたりしても、そういう気持ちのまま作業に入ったり、お店に立ったりすると、絶対に“念”が伝わると思うんです。
ほんと、バカみたいに思えるかもしれませんけど、「美味しくなれ」とか「今日はどんなお客さんが来てくれるかな」とか、「最近あのお客さん来てないな」とか、そんなことを思いながら仕込む。そういうのって、本当に大事だと思っています。 野菜の質って天気にも左右されるし、生産者さんの状態にもよるし、もちろん自分にも影響する。だからこそ、自分ができるだけ“プラス”でいるように心掛けるんです。もちろん落ち込むこともありますけどね、いろいろ(笑)。
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でもそうやって前向きな気持ちでいようとすること自体が、こだわりでもあるんですね。
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そうですね。今、来てくれるお客さんがよく言ってくれるのは、「ここに来ると元気をもらえる」ってことなんです。
だからこそ、自分が無理してでも元気でいるかって、ある意味、僕のこだわりかもしれません。お客さん同士が「ここってこういうお店だよ」って自然と説明してくれたり、人づてに広がっていったりするのが理想だなって思っています。
やっぱり、人づてって強いですからね。
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お客さんとの関係が、すごくあたたかくて素敵ですね。
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そうですね。たとえば、いつもサラダを「めっちゃ美味しい」って買ってくれるお客さんがいたり、最近も、おじいちゃんが来て「ここではこの飲み物を頼まないと座れないんですよ」って冗談交じりに言ったりして(笑)。
やっぱり、「自分がどう思っているか」「自分とどこまで向き合えるか」っていうのが一番大事なんだと思います。
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お店のことをいろいろと伺ってきましたが、ここでお店の一押しメニューを教えてください。
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ぬか漬けか、お弁当ですね。
でも、ぬか漬けってけっこう癖があるから、苦手な人もいるんですよ。
今、自分でも練習中で、もっとあっさり系で出汁ベースの辛くないぬか漬けを作ろうと思っています。
味もバリエーションがある方が楽しいし、何よりも身体が変わってほしいっていう思いがあって。 この前も、ぬか漬けのゆで卵を知り合いからもらって食べて、美味しすぎてって言ってわざわざ朝倉から買いに来てくれたんですよ。その方、7000円分くらい買ってくれたんですよ。
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それはすごいですね!
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お客さんにどれだけ喜んでもらえるのかが一番大事だし、今も勉強しながら、改善していますね。
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「腸活野菜弁当」っていうお弁当のネーミングも気になります!
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やっぱり「腸活」って、言葉としてわかりやすいじゃないですか。
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どんな方に食べてほしいですか?
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仕事が忙しくて食生活が乱れがちな方におすすめです。
実際、昔からの友人でも「野菜弁当が毎日食べられるならいいな」って言ってくれたりします。
700円台くらいで週に3回くらい食べてもらえたら理想ですね。
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確かにそのくらいの価格帯だと、続けやすいですね。
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そうですね。あと、「最近肌が綺麗になったって言われました」とか「体調が良くなった気がする」といった声もよくもらうんですよ。
特に一人暮らしで食生活が不規則な方には、腸活サラダやお弁当はすごく喜ばれていますね。
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やっぱり、体に取り入れるものだから食事って大事ですよね。
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そうなんです。うちは、そういう食の悩みも話してもらえる場所でもあるんですよ(笑)。
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相談できる八百屋さんって、いいですね!
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ちょっと極端な話ですけど、「ここに通って人生が変わった」って言ってくれる方もいて。だいたい1年くらい通ってくれると、自分で麹を買ったり、発酵食品を作り始めたりするようになるんですよね(笑)
そこからさらに他のお店を巡るようになったりして。でも、たまに「ただいま」って帰ってきてくれますね。
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ありがとうございます。では改めて、今後のやさいこころさんとしての展開についてもお伺いできますか?
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10年後くらいには、コンビニやスーパーにこういう野菜が当たり前に並んでるような状況になると思っているんですよ。
だから、最初は「うちみたいな店はいずれ必要なくなるのかも」って思ってたんですけど、実際にはコミュニケーションを求めるお客さんが一定数いらっしゃるんですよね。
だからカフェみたいな、ちょっとした飲食スペースのある八百屋が、地下鉄や西鉄の各沿線に一つずつあればいいなと考えています。
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なるほど。食の悩みを共有する場にもなりそうですね。
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そうなんです。みんな悩んでるんです!!
食の悩みで仲良くなって、信頼関係ができて、恋愛の悩みとか人生相談みたいな話まで広がる。
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食って、人間にとって欠かせないものだから、そこからいろんな考え方も変わりますよね。
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うちも一人じゃ限界があるんで、いろんな協力者を募って、やっと準備ができた気がします。今ではいかに自分が社会に貢献できるかって考えるようになったし、方向転換してよかったなって思うようになりましたね。
もちろんオーガニックとか無農薬といったこだわりも大事だけど、それだけじゃ補いきれない部分もあって。たとえば、無添加のものしか食べてないのに、元気が出ないというかたも実際いらっしゃる。
マイナスを減らすだけじゃなくて、プラスをどう取り入れるかも大事なんです。何を、どう食べるかをきちんと考えると、人はもっと元気になれる。もっとエネルギッシュになれるんですよ。そういうことも、正しく伝えていきたいですね。
たとえば、うちで出しているサラダボウルって「意識が高い人向け」って思われがちですけど、本当は、もっと“普通の人”に、普通にお昼ごはんとして手に取ってほしいんです。
そして気づいたら身体が変わっていた、というのが理想なんですよ。それくらい日常的なものにしていきたいんですよね。
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「日常にする」って大事ですよね。オーガニックって、特別なイメージを持たれやすいですし。
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そうなんですよ。だから僕はあえて、「オーガニック」とか「無農薬」とか、あんまり強調し過ぎないようにしています。
そういうワード出しちゃうと構えてしまう方もいるので。
ふらっと立ち寄ってお惣菜を買って、「なんか最近体調よくなった気がする」って思ってもらえたら、それが一番うれしいですし、そこから自然に「実はこういう野菜を使ってるんです」と伝えていけたらいいなと。 大事なのは「続けられること」ですね。それを大事にしていきたいです。
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最後にお伺いしたいのですが、Taberiiについてどう思われましたか?
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「これ、僕が思っていた最高の福利厚生の形だ!」って思いましたね。
僕のお客さんにTaberiiの話をしたときも「目の前のお金で支援してもらえるって、全然違うよね」って言ってくれて。それって、リアルな支援なんですよ。実際には、そういう制度を導入したくてもできない経営者のかたも多いと思います。
でも、ちゃんと内容を知ってもらえれば、「これからの時代に必要な仕組みなんだ」と感じてもらえるはずです。今は“言葉”より“行動”で示すことが求められている時代だと思います。
こういう形でのサポートは本当に嬉しいし、意味がある。僕自身もすごく共感していますし、これからもっと広まってほしいなと思っています。
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ありがとうございます。本日はお時間をいただきありがとうございました!
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こちらこそありがとうございました!