Interview
Bistro & Delicatessen テリーヌテリーヌ様
インタビュー
今回は、福岡市中央区の薬院にある”Bistro & Delicatessen テリーヌテリーヌ”のオーナー・ソムリエの浦川 智範さんにお話を聞いてきました!
-
浦川 智範(うらかわ とものり)さん
-
Taberiiインタビュアー
-
-
本日はどうぞよろしくお願いいたします!
-
-
よろしくお願いします。
-
-
まずは、お店を始められた経緯を教えていただけますか?
-
-
そうですね、私たちはもともとワインの販売を専門にしてまして、私は酒販店でワインの担当をずっとしておりました。奥さんは現在料理長をやってますけど、もとはお酒の卸業でワインの販売を20年やっていました。ソムリエの資格も持っておりまして、よく デパートさんや色んなワインショップにお酒を卸してました。 奥さんとはワインの資格を取るときのワイン教室で知り合って結婚したんですけど、その後私もソムリエの資格を取りまして、2人でワインを販売するお店をやりたいとなったことがま ず最初ですね。
ただ、ワインショップをやっても、私たちはもう完全な後発になるんですね。先にワインショップはたくさんありますので、なかなか特色を打ち出せないということで、料理とセットでワインを販売しようかというところから始まったんです。 ワインはスパークリングワインや白ワイン、赤ワイン、甘口から辛口まで色々ありますので、その中でどんな料理を一緒に販売したらいいかと考えて、「テリーヌ」というお料理にたどり着きました。テリーヌはフランスのお料理で、四角い容器にいろんな食材を詰めて、蓋をしてオーブンで焼き上げたら 、ひとつの塊になりまして、それをカットしてお召し上がりいただく料理なんですが、これだったら色んなテリーヌとセットで売りやすいんじゃないかというところから、お店がスタートしております。
もともと酒販経験が二人ともありますので、ワインショップと料理のテイクアウトをセットにしたお店をやろうということで、そうしたら後発でも特色が出せますので、お客さんも料理と一緒にワインを買っていけるというメリットがあります。だから最初は本当にこじんまりとスタートしたんですが、それからテイクアウトが発展しまして、オードブルの盛り合わせと一緒にワインをセットで楽しむスタイルに広がっていきました。
そして、店内で食べたいというお客さんもいらっしゃったので、もう10年前になりますが、改造してこういうビストロ形式にしました。 串揚げ屋があったところを居抜きで買ったので、最初はカウンターだけのお店で内装だけ洋風に作り替えてやってたんですけど、お客さんが増えてきたので少し狭いなということで、小さなテーブルも設置してですね、そういう風にやり始めました。 ですから、「バル」って呼ばれる業態の先駆けだったのではないかなと思います。「バル」という言葉が定着する前だったんでですね。いわゆる気軽に来て、ワインを飲んだり、ちょっとしたテリーヌなどのおつまみを食べながら過ごすっていうスタイル。2007年のオープンなんでですね。その後ぐらいから、いわゆるバルブームっていうのが起こったのが2010年ぐらいからなので、まだそういうスタイルのものがなかったんで、珍しがられたというのがあります。
-
-
店名の「テリーヌ」はそのテリーヌから取られたんですか?
-
-
そうです。いわゆる一番売りの料理であるテリーヌをアピールしたかったので、「テリーヌテリーヌ」という店名にしました。
-
-
なぜ「テリーヌ」を売りにされたのですか?
-
-
テリーヌはワインに合わせて持って帰りやすいというメリットがあります。オードブルにも入っているんですけど、お肉とか色んな魚介、海老などを四角い型に詰めて固めたものなので、カットして1枚ずつ販売できるので、持ち帰りがしやすいのでテリーヌを選びました。
-
-
店名の候補は他にもあったんですか?
-
-
いえ、テリーヌを売りにしようというのが先にあったので、分かりやすく、テリーヌという言葉を入れた店名にしようと思ったんですね。色々と考えたんですが、同じことを二つ繰り返した方が覚えやすいかなと思ったんですね。
-
-
確かに、言葉を繰り返すと親しみやすくなりますよね。
-
-
そうなんですよ。それは親しみやすさが出るっていうのを何かで聞いたことがあったので、「テリーヌテリーヌ」にしました。そして先にテリーヌと打ち出したらですね、一応うちが先駆者みたいにもなるかなと思って、色々と検索したんですけど、テリーヌっていう言葉が入ってる飲食店って全国にあまり無かったんですね。当時検索したんですよ。それだったら、もう先にやっとこうと思いまして。
-
-
お客さんも分かりやすいですよね.。
-
-
テリーヌを売ってるんだなっていうのは分かり易いですよね。分かり易さ、商品アピールを最優先にして、この店名に決めました。
-
-
今でもやはり一番の売りはテリーヌですか?
-
-
そうですね。毎回いろいろ新作を考えているので、今はもう何十種類とあります。常時、店頭に置いているのは7、8種類なんですけど、いろいろ季節によっても内容を変えたりしています。定番はずっと同じものだったりしますね。
-
-
オードブルにも入ってますよね。
-
-
はい、オードブルには必ずテリーヌは入ります。 固まりになってからポンと取り上げやすいので、何種類か必ず入ってます。テリーヌだけで20種類以上あると思います。レシピだけだと、もっとあって3、40種類くらいですかね。数えてはないんですけど、もう18年やってますんでね。
-
-
すごいですね。
-
-
組み合わせが自由なので、やろうと思えば何でもできますからね。お肉や魚介ベースもありますし、ゼリー寄せみたいなのもできますから。野菜のゼリー寄せのテリーヌは割と断面がカラフルになったりしますし、あと卵がベースのものもありますね。材料が自由に使えるところがテリーヌのメリットですね。
だから組み合わせで結構色んなパターンができます。お肉も、牛、豚、鴨、鶏、羊も使えますし、ミンチにしてしまえば何でも作れますので、色んな組み合わせで作っています。
-
-
テリーヌは色んな組み合わせができるのが良いですね。
では、この場所で始められた理由を教えていただけますか?
-
-
そうですね、私も色々とリサーチしたんですけど、あんまり繁華街の中心部じゃない方が良いかなと思ったんですね。例えば中洲とか博多駅前のようなところではなくて、近くに会社があって、住宅地もあってと色々考えてたら薬院がいいなと思ったんですね。
薬院は近くに浄水通があって、飲食店もありますし、渡辺通りにはビジネス街もありますよね。そして何より交通の便が集中していることですね。薬院駅から博多駅にもすぐ行けますし、天神ほどじゃないんですけど、薬院はバス停が集中しているエリアなんです。天神南側を通過して、割とどこでも行けるからですね、お客さんも寄りやすいかなと思ってですね。
そして配達も最初から考えてましたんで、中心部に店があると、どこでも配達しやすいですからね。天神地区や博多駅周辺さらに南や西の住宅地へも配達しやすい場所を探していたところ、この場所に行き着いたんですね。
-
-
浦川さんご自身は福岡に縁はあったんですか?
-
-
生まれは福岡市内ですけど、育ちは太宰府市の方になります。高校を卒業して、しばらく10年くらい東京にいまして、その後福岡に戻ってきて、酒販店や飲食店で働いていました。
-
-
じゃあ、福岡で開業することになったのはなぜですか?
-
-
最初から福岡で開業しようと考えていたわけではありませんでしたが、実は、最初は自分が店をやることは考えてなかったんですね。そんな能力があると思ってなかったんです。ただ、酒販店で勤めているときにワインを勉強し始めたんですが、そこがディスカウント系の酒販店だったので、 ワインに本格的に力を入れているお店ではなかったんですね。その時にワインをやりたくて独立しようかなということを考え始めました。
福岡を選んだのはもう流れですね。私は福岡が地元で東京に10年いて、もうバブルもはじけて、働くならどっちでもいいかなと思って、一旦福岡に帰ってきました。東京にそのままいてもよかったんですけど、これは1990年代後半の話なんですけど、日本中どこもバブル崩壊後の不況だったんですね。そしたら東京にいてもこっちにいても仕事の状況はあんまり変わらないんです。 当時、私はファミリーレストランで働いていましたが、こっちにいても同じ仕事内容なんですよ。それならじゃあもう地元に帰ろうと思ってですね。それで帰ってきただけのことです。
たまたま実家のすぐ近くに新しくオープンする酒販店がスタッフを募集していたので、繋ぎのつもりでそこに入ったんです。ずっとファミレスにいて飽きてきていたので、酒販店に入って店長を任されるうちに自分でもやってみたくなったっていうのがあります。 そこで経営のノウハウを学んだり、取引のあった酒類卸業者とも関わるようになり、交流会や勉強会を通じてソムリエの資格取得にも挑戦して独立してワインショップを開業しようと決めました。
-
-
そこで奥様と知り合われたんですよね。いろんなお酒がある中で、ワインに惹かれたのはどういうところだったんですか?
-
-
ちょうど90年代後半にですね、赤ワインブームが起こったんですよ。ポリフェノールが体に良いということでですね。
その頃の私はワインのことは全く分からなくてですね、赤とロゼの区別もつかなかったぐらいだったんですけど、お客さんがどんどん聞いてくるからですね、こっちも最低限の知識は知っとかなきゃいけないと思って、それでちょっと勉強し始めたんですよ。お客さんの方が詳しかったりするんですね。ビールとか日本酒だったらどうにかなったんですけど、ワインのことは全く知らなかったんですね。
それで勉強し始めたら、勉強することが山ほどあったんで、これは教室に行かないと追いつかないということで、教室に行き始めたんですけど、やっぱり飲まないと分からないんですね。そこはテイスティングもあったので、それで教室に通い始めました。そしてそこでソムリエの資格も取りました。
-
-
すごいですね。最初は分からなかったけど、勉強して、深く知っていった、ということですよね。
-
-
そうですね。あの頃、ワインを置いたら置いただけ売れていくっていうのがあって、主婦の方や、普段ワインを全く飲まない人がどんどん買っていくんですよ。買った後でどうやって使ったらいいのかを尋ねられるんで、そのアドバイスもやっぱり売った側としてはしていかなきゃいけないんで、赤ワインはお肉料理の時に合いますよとかですね。そういうのから始めたんです。
-
-
では、ワインを学び始めたきっかけは、ワインブームだったんですね。
-
-
ワインの勉強についてはそうですね。ワインの勉強を始めると、当然料理の勉強もしていかなきゃいけないんですよ。ワインの資格の中に料理との組み合わせっていうのが必ず出てくるんですけど、聞いたことのないフランス料理がいっぱい出てくるんですよ。食べたこともないんですよ。
だから、それがどう合うのかもわからないので、じゃあそういうのを出している飲食店に食べに行ってみようっていうので、そこで教室で一緒になった人と、どこに行ってみるかを相談して行ってみると、ワインの教本でしか見たことのない料理が出てくるんでですね。面白いですよね。そこでテリーヌも知ったわけでですね、こういう料理があるのかっていう。
-
-
食べに行ってみるお料理はフランス料理とか、イタリア料理ですか?
-
-
そうですね。やっぱりワインに合わせるので、やっぱりフランス、イタリアが中心ですね。実際にフランスやイタリアにも行ってみましたし。 料理名だけは聞いたことのあるものも、やっぱり実際に目の前に出てくると面白いからですね。
-
-
教本で見たものですか?
-
-
そうです。ソムリエ協会の教本に、このワインはこの料理に合うって文字だけしか出てこないんですよ。「コック・オ・ヴァン」って鶏の赤ワイン煮込みっていう料理があるんですけど、コック・オ・ヴァンって書かれたって何のことやらわからないから、とりあえずコック・オ・ヴァンを置いてる店に行ってみて、注文したら、鶏のもも肉が赤ワインで煮込まれているのものが出てきて、「これがコック・オ・ヴァンか」と思いながら食べました。
その教本に書いてあった料理に合うワインに近いものを注文してみて飲んでみるとか、そんなことをやってたら面白いなと思って、それで自分でもやってみたいなと思ったのがきっかけです。だから、料理とワインがセットになったお店っていうのが最初からありました。
-
-
そうだったんですね。そういうふうにワインに興味を持たれたんですね。 次にお店のこだわりについてもお伺いしてよろしいですか。
-
-
一番大事なのはやはり、「手作りで手を抜かないこと」ですね。 料理はすべて料理長が一人で作ってますので。
-
-
どこまでが手作りなんですか。
-
-
最初の材料を仕入れる段階から全部自分でやっていますので、出汁に関しても市販のものを使っていないですし、ブイヨンからひいています。だから量産ができないっていうデメリットはあります。あとはデザートとか、パンも焼いてます。
ケーキはですね、私たちはウェディングもできるような大きなレストランで勤めてたんですね、奥さんはそこのデザート場にいたんですよ。ウェディングケーキとか作ってたんで、その基礎がありますんでですね。
以前、あるホテルが経営の厳しい時期にデザート部門が閉鎖されたんですね。でも結婚式はやらなきゃいけないっていうので、レストランに発注が来て、うちの奥さんが作って焼いたデザートを私がそのホテルまで持って行ったこともありました。当時はもうウェディングまでやってるとですね、デザートってもう仕込み量が半端じゃないんでですね。 夜中からずっと焼き続けてたりとかしてたんで。だからもともとデザートもやってましたんでですね。だから結局料理もデザートもパンも、ここで出すものは全部ここで手作りっていうのをコンセプトにしてます。
-
-
そうなんですね。仕込みからすべて奥様の手作りなんですね。 日によって出すお料理や、テリーヌも変わるんですか?
-
-
そうですね。いろいろパターンもあって、週替わりがありますし、月替わり、季節替わりでいろいろ変えてますんで、一年通して同じものってあまりないですね。季節ごとに手に入りやすい食材とかありますんで。特に野菜は、季節を反映した料理が比較的多いと思います。
-
-
手作りにこだわっている理由はなんですか?
-
-
そうですね、それが一番楽なんですね。 むしろ市販のものを組み込む方が、かえって複雑になるんですよね。だから、ずっとそれでやっているので、市販のものを導入する方法がわからないです。 どこからどこまでを市販のものを使っていいのかとか、むしろそれがわからないので、それだと一から材料仕入れで作った方が楽なんですよ。
-
-
でも、自分でしようと思っても、簡単にできるものじゃないですよね。
-
-
最初の頃はですね。できないことはないんですが、一つ一つの工程に時間がかかってたんですね。例えば、ブイヨンを引くにしても、鶏ガラを買ってきて一から野菜と一緒に煮込んで、ブイヨンを取るということは市販のを買ってくれば、キューブを使えばいいだけのことなんですけど、やはり食べたら分かるんです。手作りが良いというのがですね。手作りで作ったものは味が違うんです。市販の化学調味料が入っているブイヨンはですね、食べると分かるんです。
-
-
手作りで一から作った方が、求めている味になるということですか?
-
-
いや、普通に美味しいからですね。ベースのブイヨンとか、チキン以外のビーフブイヨンとかも作ってますけど、市販のキューブで作るのと、自分のところの出汁で作ったものと、食べたら全然味が違うのでですね。私たちも実験したことがあるんですよ、自分たちの作ったものと市販のものを使って作って全く同じ料理を食べてみたら、「あ、これ違う」っていうのはすぐに分かりました。うちのお客さんで長い方はもう10年以上来ていただいているお客さんも多いんですけど、同じものをずっと食べているからですね、市販のものを食べると多分分かると思うんですよね。
だからもう、ずっと続けています。
この工程に慣れてしまうと、むしろそっちの方が楽なんです。変に、市販のものを使って味を整えようとする作業の方が、返って難しいです。市販のものをポチャンと入れて作ったら、ただの家庭の味に収まるので、私としてはやっぱりお金を頂いて料理を提供していますので、プロの味じゃないといけないんですね。プロの味にはこだわっていますし、家庭では出せない味。そのためには、やっぱり家庭と同じものを使っていたらダメだと思うんで自分たちで仕込んだ出汁一つにとっても、使っている野菜も塩加減も違うからですね、必ずその店の味になる、そのシェフが作った味になりますので、プロの味っていうのは多分そういうものだろうと思います。 だから手作りにこだわるのはそこですよね。お客さんにお金を払ってここに来ていただいてるんでですね、やっぱりプロの味を出さないとそれは失格だと思ってます。 だからそのためですね、手作りにこだわっています。
-
-
一押しのメニューはやっぱりテリーヌですか?
-
-
そうですね、看板メニューで店名にもなってますんで、特にこだわりがありますし、テリーヌを作るノウハウもうち独自のものが多分あると思います。 テリーヌって意外と作り方も色々あるんでですね、色んな人の、他の飲食店の話を聞いてもやっぱりそれぞれ作り方が違ってますし、混ぜる材料の塩加減とか調味の加減も違うんでですね、そこはもう作る料理人の個性がはっきりと出る料理だと思います。テリーヌって作ったものを冷めた状態で切って食べますんで余計個性が出るんですね。冷たい料理が一番ごまかしがきかないんですね。作った味がそのまま出るんで、粗も全部見えてきますんでですね。
だからテリーヌは手を抜かずに、しっかり考え抜いたものを作ってますね。やはり看板といえばテリーヌになると思います。
-
-
テイクアウトがメインですか?それともお店で召し上がられますか?
-
-
半々ぐらいですね。結構買って帰られる方も多いんですよね。遠方からのお客様も多いです。うちは発送やってないんでですね、保存料とか一切入れてないもんで、発送の期間とか考えたら着いた頃には傷んでる可能性もありますんで、発送は一切お断りしてます。買って帰られて、その日か、もしくは翌日の間に召し上がっていただくお客さんにのみ販売してます。
テリーヌって本来は保存食なんですね。ヨーロッパって冬が寒いので、保存のためにああいう料理を作ってるんですよ。あと猟師がそれを保存食として持っていくんですよ。ただものすごく塩が入ってます。今食べたら高血圧まっしぐらぐらいの塩、日持ちさせるためにですね、そういうのを作っておいて、ぐるぐる巻きにしたやつを持ってって山の中に何日もいて獲物を狙っている間、自分のナイフでカットして食べたりする、そういう保存食なんです。
本来は日持ちするものなんですけど、現代の食事から考えるとありえないぐらいの塩を入れないと保存食にならないので、味優先で、塩も、適量に入れてますので、そんなに日持ちしないです。
-
-
猟師さんの保存食だったんですね!知りませんでした! テリーヌテリーヌさんに初めて来られたら何をおすすめされますか?
-
-
そうですね、初めて来られたお客さんに前菜でおすすめしているのが、テリーヌも含めたオードブルの盛り合わせですね。
いろんなマリネを少しずつ盛って、テリーヌも含めた一皿をおすすめしてますね。あとは、メイン料理だと今の時期ですと煮込み料理が多いですね。さっき言ったコック・オ・ヴァンとかですね、あとタジン鍋ってこんなテントみたいな、あれはもともと北アフリカの料理でスパイスを利かした煮込み料理もありますので、うちに来るお客さんってほとんどの方が、前菜を召し上がって次にメイン料理っていう流れで召し上がる方が多いのでですね、最後デザートを召し上がるかどうかもそのお客さん次第ですけど、そのスタイルもずっと、私たちが何回かフランスに行って、ベースがフレンチなんでですね、向こうの食事スタイルを見てみたら、どんなお客さんでもまず前菜とメインの2皿は必ず召し上がられるんですね。単品というのが無いんですよ。 フランスの大学の学食でも前菜とメイン料理なんです。まず前菜でその後温かいメイン料理っていう、この2皿が基本になっているので、そういうスタイルをイメージしてますね。
ですから、お客様が初めて来られたときは、そういう一番ベーシックな前菜を選んでいただいて、メインのお料理を選んでいただくスタイルでお勧めしています。その前菜に、その時季のテリーヌだったり、さきほどお伝えした盛り合わせだったりは、お客様に選んでいただいています。選べるコース料理ですね。前菜が何品、メインが何品とその中からそれぞれ選んでいただくっていうものです。フランスだと一番ベーシックなスタイルです。
フランスでカジュアルなカフェに行ったら、必ず黒板で前菜とメインが選べるメニューが書いてあって、前菜はこれ、メインはこれっていう風に選んで食事をするスタイルが一番ベーシックなんですね。そのスタイルはちょっと周到したいなと思ってました。
このチェックのクロスも真似です。パリのカフェに行ったら、必ず赤と白のチェックが多いんですよ。何件か行った先でも結構この色が多いんで、それを真似してます。
-
-
たしかにそのクロスの感じ多いですよね! みなさん、ワインと前菜やメイン料理を合わせる方が多いんですね。
-
-
はい。うちは、アルコールはもうワインしか置いていなくて、ビールとかその他は置いてないので、最初はスパークリングワインから始まって、白ワイン、赤ワインをグラスで飲み進める方もいらっしゃいますし、最初にお気に入りのボトルを入れて、それで一本で飲まれる方も多いです。 酒販店なんでですね、普通の飲食店よりもワインを安く飲めると思いますよ。
-
-
ワイン好きの方にはたまらないですね。
-
-
種類もたくさん置いているので、いろいろ飲めるし、楽しめる、お好みに合うものは必ず見つかると思います。
-
-
心強いですね!
-
-
その流れで、気に入ったワインをそのまま買っていかれるお客さんもいらっしゃいますね。
-
-
お客様は、常連の方が多いんですか?
-
-
そうですね。
-
-
ワイン好きのかたが多いですか?
-
-
もう長く来ておられる方が多いのでですね。もう10年以上来ていただける方もいらっしゃいます。要は、ワインが好きであることもそうなんですけど、フランスでの食事のスタイルが好きな方ですね。海外旅行に行かれている方も多いので、年齢層もちょっと高いんですよ。私たちと同じくらいのお客さんが中心なんでですね。若くても40代、中心になっているのは50代の方が多いですね。
海外とかに行かれて、そういう食事をされてきた方が多いのでですね、こっちもある意味やりやすいんですね。スタイルが分かっているお客さんが多いからですね。
-
-
お店に来ると海外に来た気分になりますよね。 次に、これからのテリーヌテリーヌさんの展望を教えていただけますか?
-
-
そうですね。もう18年やってますので、やりたいことは、ほぼ達成しているのはあるんですけど、ただコロナでリセットしてしまっている部分があるんですね。やっぱり飲食のスタイルはお客様の方が変わってしまっているので、それ以降の飲食のスタイルの展望ができていないんですね。
それでここ1年ぐらい、円安によるいろんなものの値上げも相まって、飲食店の閉店数ってものすごく増えている状況なんですね。だから今のスタイルはこれからでも通用するのかどうかというのは今模索している状況です。だから新しいことのチャレンジというよりはですね、自分たちのスタイルがこれからもやれるのかどうかを今考えています。変えなきゃいけない部分はもちろん変えていきますしね。
-
-
お店を開かれた時に、どのくらいの年代の方に来てほしいっていうのはあったんですか?
-
-
はい、あのお店開いた時は私たちまだ40歳になったばっかりぐらいの頃だったんですね。もう自分たちと同じぐらいと思ってたんです。20代の方だったらまずワインを飲まない方がほとんどで、若くてもひと回り下の30代以降。酎ハイ とかそういうのを飲んでて、それから卒業してワインや焼酎をゆっくり飲む世代になってきた人で、初期のお客さんもそういう方が多かったんですね。
ただ、お店と一緒にお客様も年齢を重ねていくわけで、今では60代後半から70代になった方も多くなってきました。そうなると、当然来店の頻度は減るんですけど、若い人たちの思考って正直言うと全然掴みきれてないですし、こういう料理を分かってもらえるのかどうかも正直わからない。今うちに来られるお客さんで一番若い方って30代前半の方がいらっしゃるんですけど、その若さでワインとや料理が分かっているのは特殊な例じゃないかなって思うくらい、若い人たちの間の食のスタイルっていうのが私たちと乖離しているんですね。だから、もうそういう若い人たち向けにシフトをするというのを今更できないんですね。だから今やっているフランスのスタイルとかですね、そういうこだわりが分かっているお客様がどこまでいらっしゃるのかっていうのを模索している最中ではあります。
-
-
なるほど。では、お店を続けるうえで、何か打開策のようなものは考えていらっしゃいますか?
-
-
企業さんのパーティーなどでよくご利用いただくオードブルは年齢層とはあまり関係ないんですよ。それを結構拡充していって、ここ10年ぐらいはむしろそちらの売り上げの方が大きかったぐらいなんですね。本格的にはビュッフェ形式もやってましたんで。企業の会議用テーブルを並べて、クロスを敷いて、その上に料理をずらっと並べるようなスタイルですね。
-
-
いわゆるケータリングですね。
-
-
そういうのを本格的にやってたんですけど、コロナで完全に頓挫してるんですよ。企業さんが人を集めなくなったので、コロナ後ももうそのままやらなくなったって、これは大きいですね。最近は多少増えて、コロナ前ほどではないですが、そこをこれからの展望にはしていたんですけど、やはりそこがコロナ後に止まってる感じなんです。 以前のように、家庭でも人を呼んでワイワイっていうのが、やっぱりコロナでなくなってるんですね。一方で、コロナ以降増えたのは、個人向けのデリバリーですね。
-
-
例えば、どんな料理が増えたんですか?
-
-
去年のクリスマスはものすごく顕著でですね、以前はファミリー向けのオードブルが中心だったんですが、一番多かったのは、個人向けのオードブルセットでした。これが一番注文が多かったんですよ。 おせちも同じで、以前は4人用が主流だったのに、去年から2人用を作ってみたら、それが一番人気でした。夫婦だけで過ごす人が増えて、人が集まらない傾向がはっきり見えましたね。
だから企業さんのオードブルデリバリーに関しても、もうそういうのをやらなくなってるっていうのがあると思うんですよ。要は人を大勢集めて何かやること自体がなくなってますし、会議とかセミナーだったら今はZoomでできるからですね。需要が少なくなってきてるっていうのはあると思います。
今ちょうどそれが変わってきてる時期だと思うんです。飲食のスタイルが変わってきてるんで、それに合わせてこっちも変わらなきゃいけないなと思っています。
-
-
飲食のスタイル自体が変わってきているんですね。
-
-
だからこれからの料理って何でもパーソナルになってきている。だからうちのオードブル盛り合わせも、以前は大皿にまとめてが主流でしたが、最近は一人ずつ小分けにしてほしいというのがあるんですね。結局取り分けて食べるので、最初から分けてもらったほうが良いみたいな感じですね。 特にコロナの時はそれが多くて、それが今定着してきた感じですね。だから今ちょうどお客さんの飲食のスタイルが変わってきている時期だと思います。うちもそれをいろいろ模索して、これからを考えている最中ですね。新しい飲食のスタイルをこちらから提案していこうかなとも考えています。
-
-
お客さんのご要望をお伺いしながら、柔軟に対応されていらっしゃるのが素晴らしいですね。いろんな方が利用されていると思いますが、浦川さんたちは、どのように利用してほしいと考えていますか?
-
-
最初からコンセプトは変わっていなくて、ワインと料理を一緒に楽しんでほしいっていうのがあって、これは家庭でもそれをやってほしいということで、オードブルと一緒にシャンパンを配達もしてましたし、何人前かオーダーをいただいて、それに合う赤ワインをっていう、料理とワインでオーダーが入ることが多いのでそのコンセプトも今まで通りですね。「ワインと料理を一緒に楽しんでいただきたい」ということです。
-
-
ホームページには「幸せになってほしい」と書かれてますね。
-
-
そうですね。私たち自身もそうですけど、美味しいものを一緒に食べたり飲んだりすると、それだけでほっこりするなって。それを身近に楽しんでほしいっていうのがキーコンセプトなので。豪華でなくても、高級でなくても、料理とワインがすごく合っていれば、それだけで十分美味しいんですよね。
例えば何百万円もするような高級ワインとうちの料理だとたぶん合わないと思うんですね。だからちゃんと料理とワインを合わせたグレードでセットで用意できるっていうことですね。
あと、一人で作ってるんで味の統一感もあると思うんですね。料理によって塩加減とか調味料の使い方って全く違うので、うちはパンもデザートも料理も一人の人間が作ってるから味の統一感が出て、その味をよく知ってる私がワインをセレクトしますので、もうすべてに味の統一感があるようなものを提供できるというのが、うちのキーコンセプトになってます。
-
-
今日お話をお伺いして、私が感じたのは、すごく手作りでされていて、ほっこりというか、安心感みたいなのをすごく感じました。
-
-
それも大切にしていますね。どんな人が作っているかが分かる料理っていうのが、一番安心できると思うんですね。ホームページにも顔出しをしてますし、ブログでもいろいろ発信してますので、どんな人柄かは多分伝わると思うんで、そういう人が作っている料理っていうので、安心感はあると思うんですね。 市販のものを色々入れると、よく分からない部分があるじゃないですか。
だからうちはブログでも、ブイヨンの仕込み風景を載せてみたりとかですね。ここからやってますというのもお見せして、お客さんに安心して召し上がっていただけるようにしています。
-
-
ブログに載せることはお二人で考えられたんですか?
-
-
最初に、商工会議所に入会した時に、担当の方が「よかよかブログ」っていう地域ブログを活用すると良いとアドバイスを受けたのがきっかけです。 最初は「もうブログって何?」っていう状況で、それから始めてですね、毎日同じ時間に投稿すると見る人が習慣的に訪れるようになると気づきました。 だからもうずっと十数年間、毎日更新しています。料理だけぽんと見せるのではなくて、裏側でこんな風に作ってますよというのも、少し見せたりとかですね、そういうのをやっています。
YouTubeの動画投稿も十数年やってますけどレシピがとにかく溜まっていっているんですよ。正直に言いますと、私たちももう60歳近いですし、これからあとそんな何十年もやれないんですね。ですから、このレシピを誰かに引き継ぎたいという意味もあって公開していっているんですね。最後に私がワインを合わせてますけど、こんな料理にはこういうワインが合いますよみたいな簡単なアドバイスも含めてやってます。
飲食店の中には、料理に専念するあまり、ワインとの組み合わせを考えない方もいらっしゃいます。それは非常にもったいないと感じています。せっかく素晴らしい料理を作っていても、ワインの選び方次第でその魅力が最大限に引き出せないことがあるからです。 高いワインでなくてもいいんです。この料理に合うワインっていうセットで出せるっていうのが一番のメリットなんです。YouTubeでもこんな風にレシピ作ってるんだったら、ちょっと食べてみたいなと思う方もいらっしゃると思うんですよね。もうすぐ100本目の動画を迎えます。
-
-
記念すべきですね! 最後にTaberiiについて率直にどのような印象を持たれましたか?
-
-
話を聞いたときに、「どれぐらいの人が利用しているんだろう」っていうのを最初に考えたんですけど、クローズドなシステムなので、提供する場だけでなく、利用される方がどのぐらいいるのか、どのぐらいの規模でやっているものなのかなと思って、ホームページ等でいろいろ調べさせていただいたんですけども、去年からスタートしたものということで、これからのシステムかなと思いました。
参加している企業さんがどのぐらい集まるのかで決まってきますけど、うちがすぐ参加決めたのはですね、参加のお店を拝見したところ、デリバリーをやってるところがなかったので、こういうものは最初にやった方がいいかなと思って手を挙げました。うちはお弁当もやってますんで、企業さんの会議のときのお弁当とかにご注文いただいたりするんで、そういうときにTaberiiを通じて利用していただけるといいかなと思って参加させていただきました。
-
-
ありがとうございます!Taberiiの利用者様も増えるように頑張ってまいります!本日はありがとうございました。
-
-
ありがとうございました。