Interview

今回は、福岡を拠点に親子で活動されている” kitchen car トリタチトキ” 店主の豊田しのぶさん、娘の豊田亜弥さんにお話を聞いてきました!

  • (右)豊田 しのぶ(とよだ しのぶ)さん
    (左)豊田 亜弥(とよだ あや)さん
  • Taberiiインタビュアー

まず、お店の名前の由来を教えてください。

鳥たちが美味しい木の実や羽を休める枝を求めて集まる、豊かな樹木のようなお店になったら良いねと最初に話していて。
美味しいものを食べに来ることができて、ゆっくり休むこともできる場所になったら良いなという気持ちで名前を付けています。

素敵ですね。

お客様を鳥たちに見立てているんですが、最初はチキンを出していると「キッチンカーで共食いか」なんて言われていましたね(笑)

チキンも掛けていらっしゃるんですか?

いえ、そこは掛けていないです(笑)後から言われて、「いや、そうじゃなくて、美しく鳥たちをお客様に見立てて」みたいな。そういう純粋な気持ちで付けたんですけどね(笑)

面白いですね(笑)

最初はカタカナで書いていたので、日本語だと思われずお客様からもよくご質問いただきましたね。

なぜカタカナにされたんですか?

字のバランスを見て決めたと思うんですけど、よくよく考えるとやっぱり分かりにくいよねって。なので、最近は漢字で表記しています。

そうだったんですね。
開業日はいつになりますか?

2018年の1月です。

もともと福岡にお住まいだったんですか?

そうです。生まれも福岡です。
なので、博多弁はすごく使いますね!誰にも負けません!(笑)

確かにお上手です!(笑)
県外に出られたことはあるんですか?

主人の転勤で2年ほど長崎の佐世保に行ったことがあります。

そうなんですね。その後、また福岡に帰って来られてお店を始められる時に、 やっぱり福岡でしたいという気持ちがあったんですか?

そうですね、子供も巣立っていましたけど、福岡にいましたし。親もいたので、離れて始めるというのは考えなかったですね。
最初は固定店舗かなとも思いましたけど、本当に素人だったので。何にも分からないし、場所も自分で選びきれないし。それで悩んでいたら、移動販売車の本を本屋さんで見かけて、「あ、良いんじゃない」と思って始めました。

本を見てということですが、移動販売のどういったところに惹かれましたか?

何らかの形でお店を始めたいという気持ちはずっとあって。韓国の文化や食べ物に興味があったのはもちろんですが、韓国では、川沿いにいろいろ屋台が出て、人がわーっと集まることが頻繁にあるんですね。 韓国のバラエティー番組でその光景を見た時、本当にみんな楽しそうで。当時の日本では食べ歩きが今ほど一般的ではなかったので、そんな光景が周囲にもっと増えたらと思って、移動販売にしました。

元々韓国がお好きだったんですか?

そうです。一番初めの韓流ブームで好きになりました。
最初は、隣の国に韓国があるということさえ意識していませんでした。ソウルオリンピックとか言っても、「ふーん」ぐらいの気持ちでいたんですけど。韓国ドラマの健気なストーリーが新鮮で、好んで観るようになりました。また韓国ドラマは食べるシーンが多いんですが、観ているうちに今度は「何を食べているんだ」と気になってきて。とにかくバラエティー番組でもよく食べるんですよ。そして、食べっぷりもいいし、「もう食べなさい、食べなさい」という感じで。「食べることは生きること」みたいな、食への情熱も新鮮に感じましたね。
ドラマとかに出てくる伝統的なお菓子も、実に上品というか、色や手の入れ方から、全てが繊細だったんですね。そこが、すごく魅力的で作ってみたいなと思って、お菓子も扱っている韓国宮廷料理を習い始めたんです。福岡に韓国観光公社があるんですけど、そこで偶然宮廷料理の先生にお会いする機会があって、教室に通うようになりました。

学ばれてみて、日本料理と韓国料理の違いはありましたか?

使用する食材や基本的な製法は似ているところも多いですが、例えばスープの出汁をひとつ取るにしても、日本よりもじっくりと時間や手間を掛けるように感じました。
それですごく深くて良い味が出るんですよね。韓国料理は辛いばかりみたいな印象が最初はあったんですけ ど、本来はすごく奥深いものなんだなと。

良いですね。

韓国のご飯は、食べることで健康になるという薬食同源の思想があるんですよ。食べる人の体が良くなるようにご飯を作るという考えが根底にあるのも韓国料理の良さだと思います。

確かに、また日本と違う良さですね。

日本では、チーズや唐辛子が沢山使われたジャンクな韓国食が流行りがちなんですけど、昔ながらの韓国の ご飯は薬膳ベースで、健康を願って作られる料理がほとんどなんですよね。そういう魅力をお客様にもお伝えしたくて。
当店のメニューに「ヤンニョムチキン」というものがありますが、それも「薬」に「念じる」と書いて薬念(ヤンニョム)なんです。韓国の食文化の良さが表れているなと思って、あえてうちでは漢字で表記しています。お客様に「こんな風に書くんだ」と関心を持っていただくことも多く、嬉しいですね。

私もトリタチトキさんで見て、初めて「薬念」と書いて「ヤンニョム」と読むと知りました。
お店を利用される方は、常連さんが多いですか?

そうですね、リピーターの方が多いです。基本的には女性の方が圧倒的に多いですね。
あとは、来てくださるお客さんは場所や時間によっても変わってくるんですけど、ランチとかだと男性の方にも最近来ていただいています。

韓国料理を好きな女性は多いですよね。
次に、お店の一押しメニューを教えてください。

キッチンカーではキンパが人気で、私たちもおすすめしたいですね。

キンパをいただいたことあるのですが、沢山具が入っていて美味しかったです。

キンパは、具材をひとつひとつ味付けしていて。それが全部響きあっての味なので、お店によって特徴が出や すいんです。なので、うちの味を気に入ってくださったお客様には、「ここのキンパが美味しい」とお言葉をいただいたりしますね。

お店によってそれぞれの味があるんですね。

以前、オフィスをいろいろ巡る仕事をしていたことがあったんですけど、お昼の12時からパチンと電気を消し て、暗い中でパソコン作業をしていらっしゃる方をお見かけしたんです。
そんなお昼も食べられない時にも、一口サイズでお肉も野菜も入っているキンパはおすすめですね。

一口サイズで食べられるのは良いですね!

そうなんです。キンパは美味しい一口が詰まっている感じが魅力ですよね。

私も美味しい一口が詰まっていると思いました!
お店で大切にされている、ポリシーはありますか?

個人の見解ではあるんですけど。日本で主流となっている韓国料理店は、伝統に基づいた本格的な料理を 食べられるお店と、流行りのものが気軽に食べられるカジュアルなお店に何となく分かれていると感じていて。韓国にお詳しい方は、流行に特化したお店だと少し物足りないと思いますし、逆に伝統を重んじるお店は、初めての方には敷居が高かったりしますよね。
私たちはその中間くらいで、伝統的な韓国食に少し触れられて、尚且つ気軽に行きやすい店でありたいと思っています。なので、本場の味をそのまま再現するというよりも、日本の方が食べやすいようにというのはずっと意識していることですね。
実は、店主も辛いものがあまり食べられないんです。なので、例えば薬念(ヤンニョム)チキンの辛味は本場よりもかなりマイルドにお作りしています。 それを一部のお客様からは「食べたいとずっと思っていたけれど、辛くて食べられなかったから助かります」と言っていただくことがあって。やっていて良かったなと感じます。

すごく素敵な思いですね。
そういった気軽に来てほしいという思いは、どこから来ているんですか?

馴染みのない文化は、最初は少しハードルが高いですよね。例えば「韓国料理のキッチンカーです」と言うと 「韓国料理は辛いから食べられない」とおっしゃる方もいらっしゃるんですが、キンパをはじめ、優しいお味の料理も沢山ありますし。韓国食への入り口として、安心してお試しいただける店でありたいですね。

元々、韓国との繋がりは何もなかったんですよね?

韓国にも2回しか行ったことないです。笑っちゃいますよね(笑)韓国を好きになった頃、行きたくても行けない時期があったので、そういう方が私以外にもいるだろうなと思って。小さいお子さんがいらしたりして家を離れることができない方たちに、近場で韓国の味を味わってもらいたいというのもありましたね。

味付けも食べやすいように辛味を少し抑えてと仰っていたので、全く同じ味ではないでしょうけど、作り方はそのままで韓国の味を、ということですよね?

そうですね。それが出来るのは教えてくださった先生のおかげもあると思います。 お店をしていて、一番のベースにあるのは、まだみんなが認知していない韓国の良いところ、自分たちが良いと思ったところをお伝えしていきたいという考えがあるかもしれないです。
最初は全然付き合いがなかった韓国ですけど、こんな良いところがあるんだと知って。来てくださるお客様にも知っていただきたいですし、美味しいものも食べていただきたいですね。

私も韓国について、知らないことが多いです。

店主の上の世代の方の中にはまだ多少偏見も残っていて、お店を始めるときには周りからの反対もあったんですが、知っていただくことで何か変わることもあると思うので。

確かにまだ偏見が残っていますよね。

嫌だから見ないではなくて、嫌だけど良いものは良いと思えるような流れを作りたいですね。

韓国が好きだからだけではなくて、そういった想いを持たれて活動されているんですね。
韓国料理だけではなくて、韓国の文化をみんなに伝えていきたいという思いがあるんですか?

そうですね。私たちもまだまだ勉強中ですが、韓国を訪ねると文化面でも新鮮な体験ばかりです。

今後の展開を教えていただけますか?

韓国の伝統菓子や伝統茶を中心にご提供したいと考えています。お菓子はビジュアルも凄く可愛いですし、木の実や蜂蜜が沢山使われていて、体にも良いんですよ。

そうなんですね!食べてみたいです。

伝統茶は、韓国だとお花や実が入ったお茶が多くて、その時の自分の体調に効能を合わせて飲んだりするんです。それも日本にはあまり無い風習で、疲れた人たちの癒しの一杯になるという魅力があるなと思っています。

お花や実が入ったお茶ですか。見た目も綺麗で、気分が上がりそうですね。 他にも何か考えられているんですか?

私が花屋をしているので、お茶やお菓子と一緒にお花も贈れるようなギフトを考えています。今後の展望については、今まで通り、韓国の魅力を伝えていきたいというところは変わらないですね。

今後、ご提供される内容が変わってくるので、お客様も変わってくるかなと思っているのですが、どういったお客様を想像されていますか?

お茶やお菓子で体が元気になれたり、疲れが癒える時間をお店で過ごせたり。色々と模索中で現状具体的にお伝えできることは少ないんですが、様々な環境にあるお客様が癒やされる場所を作れたら良いですね。

そうなのですね。

これまでは食事が中心でしたが、これからお茶やお菓子をご提供していく中で、ティータイムを彩る韓国のア イテムやお花も合わせてご提案していくので、文化面に関心がある方が増えたりだとか、少しずつお客様の層が変わってくるかなと思いますね。
今まではキッチンカーという業態で販売できるものにも制限があったので、韓国の工芸品だとか、お店に来ていただくお客様が生活に取り入れたいと思えるものに出会える場所にできたら良いですね。

日々、いろんな刺激を受けて疲れている働く人達は癒しを求めていると思うので、癒しの場があるのは良いことですよね。

それこそ、オフィスで飲んでいただくお茶にもなったら良いなと。持ち運びができたり、ティーバッグで煮出したらすぐに飲めたり。お花やハーブのお茶って目にも楽しいものですけど、煮出した後に取り出して、茶漉しを洗ったりする手間があるじゃないですか。
忙しい方は中々毎日に取り入れるというのが難しいと思うので、体に良いものや気分の上がるものを、出来るだけハードルを下げてご提供したいと考えています。

毎日は難しいですよね。

でもその反面、年を重ねていくと、自分のために煮出したお茶を寝る前に一杯飲むのも良いと思うんですよ。 若い頃には分からなかったんですけど、ご褒美の一杯として、コトコト煮る時間というのも、また豊かな時間だろうなというのはありますよね。どっちも合わせてやっていきたいですね。

どっちもあると良いですよね。

そうですね。娘が若い方の気持ちを代弁してくれるので、良い組み合わせでしょう。もう「居てくれてありがとう」という感じです。若い方は家帰って、化粧落として、明日は何時に起きて、とかも考えないといけないので、時間を掛けてお茶を飲むなんてやってられないですよね。やってられないけど、年を重ねると本当に良い時間になるんです。なので、忙しい方もですけど、何か自分の生活を豊かにしたいと思っている方に寄り添いたい思いもありますね。いろんな方に届いたらいいなと思います。

最後に、Taberiiについてお話しさせていただいたときに率直にどう思われましたか?

素敵なシステムだなと思いました。

どんなところで良いと感じてくださったのですか?

食事は生活の要ですよね。会社で働いていてもランチに何を食べるかって結構重要で、それによって午後の モチベーションも変わってくるので、食べたいものを食べやすい環境が整うのは働き手にとって魅力的だと思いました。あとは、お仕事の後に会社の皆さんで行けるようなバーもあったじゃないですか。そういうコミュニケーションの場が作りやすいのも良いですね。

まだ社会で食の福利厚生は認知されているものではないので、広めていきたいですね。

でも、最近また注目され始めた印象です。以前は、いろいろ福利厚生があるような会社が良いねという感じだったけど、徐々に福利厚生に対して「ええ、そんなのに力入れるの?」みたいな会社が多くなりましたよね。けど、ここ最近またニュースとかで見る機会も増えてきていて、驚いています。Taberiiも注目されていくと良いですね。

そうですね。Taberiiも一緒に盛り上げていただけたらと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします!
本日は素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

こちらこそよろしくお願いします。ありがとうございました!